グラファイトデザイン 工場見学
グラファイトデザイン 秩父工場
担当の石井さん いつもお世話になっています。
カーボンシャフトができるまで
①保管 カーボン繊維に樹脂を塗りつけ大きな巻物になったカーボン繊維のシートはプレプリグと呼ばれ、10℃で保管される。繊維や樹脂の違いで約100種類あるという。
②裁断 ローリングカッター、ストレートカッターなどを用いてプレプリグを裁断していく。捻れを防いだり、部分的な補強に使うパーツも作製していく。
③巻き カーボン繊維のシートをマンドレルに貼り付ける。鋼鉄製の芯がね、マンドレルはデザイン別にドライバーだけでも200種類ある。白い保護シートをはがし約100度に熱したアイロンで樹脂を溶かしながら接着する。さらに次々とパーツを貼り付け、その数はシャフトの種類で異なるが10枚前後に及ぶ。その後プレス機で圧力をかけ、透明なテープを巻きつけていく。これは気泡を押し出し、マンドレルにシートをしっかり貼り付けるための工程だ。
④硬化 第一段階の検品後、加熱。プレプリグは加熱によって硬化する。約2時間炉に入れて最高145℃まで加熱する。炉から出したら冷えてからマンドレルを抜き、表面を覆った透明テープをはがす。
⑤研磨 すでにパイプ状になっているが、表面にはテープの巻き跡が残っている。これを研磨機で磨き滑らかにする。
⑥検査 外径測定、たてぶれ検査等にかけられ合格したもののみ次の工程に進む。
⑦塗装 塗装工程はカメラや人についているホコリを避けるため撮影は許されない。塗装後は最終チェックが行われ、色むらやホコリなどはついていないか、完全な商品になっているかどうか、厳密に検査。塗装後の重さ、センターフレックス計による硬さなども確認する。そして出荷を待つばかりとなった完成品ができあがる。
カーボンシャフトの開発
私達がシャフトとして何気なく目にするカーボン繊維は、とても重要な素材でもある。チタンと並ぶ戦略商品なのだ。軽くて丈夫なチタンは、ジェット機やロケットの機体などになくてはならない金属。カーボン繊維は飛行機の翼や骨組みとなっている。品質・生産量とも世界一の日本のカーボン繊維がないと、世界の航空機はできない、と言われるほど。「以前と比較して10%、原料によっては最高1,5倍まで値上がりしている。」その大事な素材をどう活かすか、カーボンシャフトメーカーは工場に入荷したシート状のカーボン繊維を裁断→巻き→硬化→研磨→塗装という過程で完成させていくが、肝心なのはその前段階だという。
「工場で製造に入る前の段階がシャフトの性能はもちろん、個性や特性を決める大事な過程です。」グラファイトデザインの姿勢はまずヘッドありき、という。シャフトはヘッドの潜在能力をいかに引き出すか、という役割を担っている。新しいシャフトが持ち込まれると、既存のシャフトにはこだわらず、そのヘッドを最も活かすシャフトはどういうものかを徹底的に研究する。そのため新たに何種類も設計し、試作。持ち込まれたヘッドに装着して何度もテストを繰り返し、納得できたものを世に送る。
グラファイトデザインはシャフトのテストのため、360ヤードの距離と高いネットに囲まれた専用のテストセンターを作った。そこでは人もマシンも打つことができる。試打した結果はインパクト解析装置、弾道追尾装置など、最新のハイテク測定器により、どのシャフトが一番効果を発揮するか、厳しく吟味。こうした数々の試行によって設計図が決まってくる。それをいかに製品として完成させるか、いよいよ工場でそれが具体化されていく。
それでは、初めにヘッドが用意されていないリシャフト用のシャフトはどのように開発されるのだろうか。「当社はトーナメントのサービスに力を入れ毎試合出かけて選手に接触しています。トッププロにとってどのようなシャフトが理想なのか、どのようなシャフトはよくないのかを徹底的に研究しています。その中から好成績をあげたシャフトをリシャフト用に作っていきます。」トップダウンでいい結果の出たものをブランドとして育てていくという。もちろんプロと同じ硬さのものはアマチュアには使えない。基本性能は保ちながらそれなりのアレンジをすることは当然だ。
最近では日本のメーカーは中国を初め、海外への進出が後を絶たない。カーボンシャフト作りについても同様のことが言える。当初は10人前後だった社員が今や100人を超える。グラファイトデザインは埼玉県秩父からスタートし、今や日本が誇る高品質カーボンシャフトを世界に送り出しているのである。
今回グラファイトデザイン秩父工場を見学した事でシャフト一本を作るのにどれだけの時間と手間がかけられているのか考えさせられた。最新設備や大型機械が導入される一方、巻き作業のように一本ずつ人の手で行われるものもあるのだと初めて知った。何より、パートのおばさんかと思った作業員が皆、数十年来の熟練工だと聞いた時には非常に驚かされた。
